若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
花柳の言葉が蘇る。

『体は大人に見えて、中身はまだまだ子どもなんだ』――確かに体は大人だった。

いやいやと、慶は己の煩悩を振り払う。十も年上の自分が誘惑されてどうする。

色香に満ちて艶めかしくはあるが、中身はまだまだ子どもだということを忘れてはならない。

自身に言い聞かせるように、心の中でガキだガキだと繰り返し、慶は必要以上に冷ややかな眼差しを美夕に向けた。

「十八のガキが男を誘惑しようなどと考えるな。ガキはガキらしく、勉学に励め」

簡単なやり取りを交わし、急いで寝室をあとにする。

情けないことに混乱してなんの説明もできなかった。冷たい言葉を浴びせて虚勢を張り、「普通の恰好をしろ。風邪をひくなよ」そう忠告するので精いっぱいだった。

意外と豊満だった胸のシルエットが、頭に焼きついて離れない。

当然、女性経験はあるし、今さら照れるような年齢でもないのだが、子どもだと思って下に見ていた彼女の予想外に成熟したカラダは、慶に生まれて初めてともいえる衝撃を与えていた。

(一緒に寝室で眠る? 冗談じゃない。理性が保てるわけがない)

万一手を出そうものなら恩師に合わせる顔がない。

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