若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
「……なんであんな恰好してるんだよ」

愚痴のようにつぶやいて、下着を渡したという使用人を恨んだ。

その後、慶は使用人たちから美夕の生活の様子を聞いた。

大学へは送り迎えつきで、学生同士の交友は許可制、アルバイトは禁止、土日は習い事で埋め尽くしたという。

これだけ縛られていては、自分らしく生活することなどできないだろう。自由にしてやれる環境が必要だ。

慶は自身が所有する個人の邸宅に招こうかとも考えたが、それでは雛鳥に『主人は自分だ』と擦り込むようなものである。美夕から選択の自由を奪ってしまう。

(ひとりで生きられるようになり、自ら生き方を選ぶまで、俺とは接触しない方がいい)

そう決断し、美夕が懐いていたという使用人の桐江に世話を任せると、ふたりをマンションの一室に放り込んだ。

桐江は家事をさせるために住まわせておくのではない、美夕を監督するため、そしてひとりでも生きていけるだけのノウハウを叩き込んでもらうためだ。



それから一週間後、桐江から連絡が入った。

美夕が食事を拒んでいるという。父親の逮捕を受け、塞ぎ込んでしまったようだ。

様子を見に伺うと、一週間前に会ったばかりだというのに目に見えてやつれた少女がそこにいて、自分の不甲斐なさを呪った。

< 176 / 254 >

この作品をシェア

pagetop