若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
「美夕が大人になる頃には、俺はおじさんになっているかもしれない」

「それでもいい」

自分が大人になる頃には、慶はさぞ素敵な男性になっていることだろう。そして、自分は慶に釣り合う立派な女性になっている、そう信じたかった。

美夕がじっと見つめていると、やがて慶は観念したようで、にこりと微笑んだ。

「わかった。なら、美夕が大人になるまで待っているよ」

「じゃあ、約束、です!」

美夕は慶の大きな小指に自分の小さな小指を絡ませ、ぶんぶんと縦に振った。

慶はちょっぴり困ったように、ふっと笑みをこぼす。

慶に認めてもらえるような最高のレディになる。そう心に決め、その日から美夕は、ピアノやバレエ、華道や書道など、あまり乗り気じゃなかったお稽古も一生懸命するようになった。



十年前の約束など、時効だということはわかっている。

だが美夕は、あの約束が頭の片隅にあるせいか、年頃を迎えても他の男性に興味が湧かず、恋人を作ることなく今に至った。


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