若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
(今考えてみれば、慶さんは私を女除けに使っただけなのよね)
子どもの面倒を見る振りをして、寄ってくる女性をすべて遠ざけ、その日予定されていた縁談をうやむやにした。
加えて、何億円という豪華なルビーを子どもにつけさせることで、嫌みなく北菱家の資産を見せつけ、招待客との会話にとっかかりを作った。
客は北菱家の長男である慶と、大きなルビーのネックレスをセットで記憶しただろう。次に会ったときも宝石の話題で盛り上がったに違いない。
(相手に短時間で強い印象を与えるのも、帝王学の手法だって父が言ってたもの)
父は社長の仕事をこなしながらも、ときおり有名大学で経営学や経済学の客員教授として登壇することがある。
とくに慶が幼い頃は、家庭教師として帝王学を教えていたようだ。慶が父親を『花柳先生』と呼ぶ由縁はそこにある。
(あの日、慶さんは『大人になるまで待っている』と言ってくれたけれど、十年経っても私はまだ大人になれていないのね)
もちろん美夕が慶に嫁いだのはあの日の約束などではなく、大人の事情のせいなのだけれど。
それでも美夕はほんの少し期待していた。十年前のあの日の続きが待っているのではないかと。
子どもの面倒を見る振りをして、寄ってくる女性をすべて遠ざけ、その日予定されていた縁談をうやむやにした。
加えて、何億円という豪華なルビーを子どもにつけさせることで、嫌みなく北菱家の資産を見せつけ、招待客との会話にとっかかりを作った。
客は北菱家の長男である慶と、大きなルビーのネックレスをセットで記憶しただろう。次に会ったときも宝石の話題で盛り上がったに違いない。
(相手に短時間で強い印象を与えるのも、帝王学の手法だって父が言ってたもの)
父は社長の仕事をこなしながらも、ときおり有名大学で経営学や経済学の客員教授として登壇することがある。
とくに慶が幼い頃は、家庭教師として帝王学を教えていたようだ。慶が父親を『花柳先生』と呼ぶ由縁はそこにある。
(あの日、慶さんは『大人になるまで待っている』と言ってくれたけれど、十年経っても私はまだ大人になれていないのね)
もちろん美夕が慶に嫁いだのはあの日の約束などではなく、大人の事情のせいなのだけれど。
それでも美夕はほんの少し期待していた。十年前のあの日の続きが待っているのではないかと。