若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
(やっぱり、そこまで都合よくはいかないみたい)

美夕はもう慶に甘やかしてもらえるような子どもではない。同時に、女性と認めてもらえるほど大人でもない。

自分がひどく宙ぶらりんに感じられ、この先、どんな顔で夫の前に立てばいいのかわからなくなった。

妻の顔をすべきなのか、彼に命じられた通り、子どもらしく従順な姿を見せていればいいのか。

素直な子どもの振りをするのは簡単かもしれないが――。

(……でも、そんなの嫌だわ)

自分は大人の女性であり、慶の妻なのだから。

憂鬱を覆い隠すように、美夕は毛布を被って目を瞑った。



学生花嫁の一日は忙しい。

まだまだ未熟な美夕の指導は、使用人頭が一任されているらしく、『家の中でもきちんと正装をしてください』、『人前で携帯端末をいじるのはお控えください』など細かなお小言が飛んでくる。

『お食事は奥様より早く召し上がってはなりません。遅くてもなりません』と言われ軽く頭を抱えた。そんな器用なことができるだろうか。

漫画や娯楽雑誌などもってのほか。この家に持ち込もうとしたファッション誌は即座に廃棄された。

携帯端末に電子書籍をダウンロードしているとは口が裂けても言えない。

< 21 / 254 >

この作品をシェア

pagetop