若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】

ぶっきらぼうな顔をしてこれでもかと気遣う慶に、思わず笑みがこぼれてしまう。

美夕の中で慶の印象はがらりと変わった。本当はすごく優しくてマメで真摯な人。

生意気な口調と不遜な態度で誤解されがちだけれど、たぶん誰より愛妻家だ。

「六年前、慶は私に『他人に頼ることなく生活できるようになれ』って言ったのに。今ではひどい甘やかしっぷりね」

そう言って笑うと、慶はいたたまれない顔で目を逸らした。

「懺悔、だろうか」

「懺悔？」

「六年間ずっと、夫でありながら夫らしいことをしてやれなかった。なるべく関わらないように距離を置いていた」

慶が美夕の隣に座り、指先でそっと頬を撫でる。その表情は、珍しく葛藤が見え隠れしていた。

「お前が雛鳥に見えていた。俺が近づけば、盲目にくっついてきてしまうだろうと。それは、お前自身の意思を潰すことになる」