若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
十八歳だった美夕は、二十八歳の慶からみて、ひどく頼りなげだったに違いない。

今の二十四歳の美夕から見ても、当時の自分は浅はかで子どもだった。

そのときは立派な大人だと思い込んでいたのだから、いかに視野が狭かったのかがわかる。

「だが、お前のためと言いながら、過酷な道を敷いたことには変わりない」

慶の手が美夕の頬を包み込む。

「ずっと安全な箱庭に閉じ込めておけばよかったのかもしれない」

大きな手が背中に回り、美夕の小さな体をぎゅっと抱きしめる。

体だけ見れば慶は随分と大きいのに、今の彼は妙に小さく感じられた。

「俺の選択は、正しかったのだろうか」

今や世界経済を動かす力を持つと言われている偉大な金融王は、かつて二十歳にも満たない妻への愛情表現に、こんなにも悩み苦しみ葛藤していたのだと、初めて知った。

「私は安全な場所にいたわ。あなたが用意してくれたあの家に」

慶をそっと抱きしめ返す。いつも美夕を安心させ、守ってくれた彼に、ようやくお返しができる。

「あなたは私を守りながらも、閉じ込めないでいてくれた。自由に外を歩かせてくれた。私は自分の意思で未来を選び取り、今ここにいる」

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