若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
彼のしてくれたことを思えば、感謝しかない。

あの冷たかった態度も、挑発するようないじわるな言動も、全部全部、美夕のためだった。

「あなたは全部、正しかった」

慶の額にそっと唇を寄せると、慶は腕の中の美夕をぎゅっと強く抱き込んだ。

「う……苦しい」

美夕の呻きでようやく我に返ったらしく、慶は「悪い」と言って体を離す。

「今度こそ、大切にする。お前を幸せにできるように」

その目は強く猛々しくありながらも、迷いが見え隠れしている。

常に堂々としている慶だけれど、迷いなく決断しているわけじゃない。

熟考し、悩みながらも最善を選択しようとしている。その決断が積み重なり今の彼があるのだ。

「『今度こそ』じゃないって、何度言えばわかるのかしら」

珍しく弱みを吐露する慶を、美夕は包み込む。

「私はずっと、大切にされているわ」

自活できるようになり六年ぶりの再会を果たしたあの日、同じ土俵に立ったと慶は言ったが。

美夕は今、ようやく慶のいる場所まで辿り着けたような気がした。妻と夫が、横に並んで歩ける場所に。

これからは自分が夫を支えていかなければならないと、美夕は強く決意した。



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