若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
一方、慶は揺るがぬ態度で、堂々向き直った。

「まずはご報告を。妻が懐妊いたしました。今後も末永く、夫婦を見守っていただきたい」

「ふっ……」

議員が鼻で笑い飛ばす。

「なにかと思えば。愛人の子がいようがいまいが関係ないよ。その程度の甲斐性、君にはあるだろうから」

「私は嫌だわ。夫に隠し子がいるなんて」

「大きな家の男など、そういうものだよ。正妻は心を広く持つものだ」

江怜奈はムッとした顔をする。

「私、昔からこの子、嫌いなのよ。ねえ。父親みたく消しちゃだめなの?」

江怜奈の横暴な言い分に、議員は「こら」とたしなめる。

「滅多なことを言うんじゃない」

「でも――」

「どうせ彼らは録音でもして、私たちが不利益なことを漏らすのを待っているのだろう」

議員の言葉に、江怜奈はハッとして口を噤む。警戒心をあらわにして美夕を睨んだ。

録音していることを慶から聞いていた美夕は、読まれていたことに内心ひやひやしていたが、慶は想定内とでも言うように悠然とかまえている。

「あなたの悪事を暴こうと決めてから、六年も経ってしまいました。ようやく機が熟した」

「なにを言っているのか、さっぱりわからんよ」

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