若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】

「そのお嬢さんのことは仕方がない。子どもができてしまったなら、堕ろせなどとは言わないよ。付き合い方を考えてくれればいい。離婚などよくあることだし、婚外子などごまんといる」

議員と目が合い、美夕はぞっと身を強張らせた。なだめるように慶の手が背中に回り、美夕をそっと支える。

「君も私を敵に回したいとは思っていないだろう？　今の君に私が完全勝利できるとは思っていないが、致命傷を負わせることはできる」

議員が威嚇を含んだ目で慶に微笑みかける。

しかし、慶は怯む様子もなく、淡々と要求を突き付けた。

「さんざん手を出しておいて、対等な交渉もなにもないでしょう。まずは妻への嫌がらせを即刻やめていただきたい」

「嫌がらせ？　なんのことだ」

議員は本気でわからないというような顔で目を眇めた。

「妻の会社への無言電話、自宅への不法侵入、不審な連中に付け回させ――」

江怜奈がさっと目を背ける。議員はようやく事態を呑み込み、怒りを宿した目で娘を睨んだ。

「江怜奈。お前、なにをした」

「だって、お父様、言ってたじゃない！　なにかあったら使ってもいいって――」

「まさか、アレを使ったのか……！？」