若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
一週間、慶とは顔を合わせず、美夕は大学と家の往復を繰り返した。

車で大学まで見送られ、授業に出て、帰りは所定の場所にお迎えが来て直帰する。驚くほど単調な学生生活だ。

この日も美夕は五限の講義を終え、真っ直ぐ迎えの車に乗り込み、北菱家に戻ってきた。

だが、この日は少しだけ、いつもとは違うことが起きていた。どちらかというと悪い方向に。

「これは……」

二階にある自室のドアを開け茫然とする。

部屋のものがなくなっている。いや、正確には、家具の中身が空になっていた。

クローゼットの中の服も、本棚にあった教科書類も、テーブルの上に置かれていたパソコンや、ペン立てや充電器などの細かいものまで。

まさか、出ていけということだろうか。

「控えめに言って、嫁失格ってことかしら」

苦笑しながら、ひくりと頬を引きつらせる。日々自由を制限されても文句のひとつも言わずに頑張ってきたというのにこの仕打ち。

夫からはガキ扱いされて放置。

(そろそろ本気で実家に帰りたくなってきたのだけれど……そんなことをしたら父が泣くかしら?)

とりあえず、その辺にいる使用人を捕まえて事情を尋ねてみようかと、美夕が辺りを見回したとき。

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