若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
「教えない」

「どうして?」

「照れくさいだろ」

「自分の子の名前なのよ? あなたがつけるのよ?」

名付けで恥ずかしがる必要などない、美夕が真っ直ぐ見つめると、慶はあきらめたような表情で息をついた。

「俺としては、『夕』という字を入れたい。お前が父親から受け継いだ名前だろう」

美夕の『夕』、そして父、夕輔の『夕』。親子の絆を尊重してくれているのだと気づき、美夕はほんのり胸が温かくなる。

「ねえ、どうして慶は父を慕っているの? 勉強を教わっていただけにしては、思い入れが深そうなのだけれど……」

「先生は、高嶺社長が言っていたように高潔な人だ。でも、俺の場合はそれだけじゃない」

慶は遠くを見つめると、懐かしむような笑みを浮かべた。

「……俺に自信を与えてくれた人だ」

予想外の返答に美夕は首を傾げる。

慶は常に気高く威厳を漂わせていて、自負の塊ともいえる。その彼に自信を?  

< 234 / 254 >

この作品をシェア

pagetop