若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
「小学校の頃は、あまり自信がなかったんだ。家名はプレッシャーでしかなかった。学校で発言するたび、テストを受けるたび、スポーツの試合をするたび、ミスをしたら北菱家の長男という肩書に傷がついて、この身が粉々に砕け散るんじゃないかと怯えてた」

美夕が驚きに目を見開く。今やこんなにも堂々としている慶にそんな時代があったとは、到底考えられない。

「先生の帝王学は、まず自分に自信をつけるところから始まった。誰もが慕い、尊敬し、敬われる人物になることが、トップに立つために必要なのだと俺に教えた」

「父は、どうやって慶に自信をつけさせたの?」

「まずは、自分がいかに矮小な存在であるかを知らしめられた」

「え」

美夕の声が凍りつく。自信をつけさせるために一度自信を失わせるなんて。父はなにを考えていたのだろう。

そもそも、北菱家の長男にそんな失礼なことをしていたとは。

よく家庭教師をクビにならなかったものだと、美夕はむしろ感心した。

「自分を過大評価してトップに立ったところで、緩い地盤はやがて崩れる。おごるなと言いたかったのかもしれない。とにかく俺がみんなと同じ普通の人間で、ごくごく平凡な子どもなのだと教え込まれた」

「……それで?」

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