若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
「その上で、自信をつけるためにはなにをすればいいかを教わった。誰よりも早く決断するために論理的思考を学んだ。判断力を底上げするための知識、勉学や体力はもちろん、立ち居振る舞い、言葉遣い、所作。先生が俺を改革していって――」

慶は両手を広げ、肩を竦めておどける。

「こうなった」

「ふふふ」

慶のこの人格は、父が作り上げたものらしい。自分の知らないところで父がそんなことをしていたとは思わなかった。

「私には自信のつけ方なんて、教えてくれなかったのに」

「普通に生きていれば必要ない。それに、娘には甘そうだったな、あの人は」

慶は苦笑する。

まだ幼い慶に娘のことをどのように語っていたのだろう、美夕は想像して照れくさくなった。

「お前は、お腹の子をどんな子に育てたい?」

「私は――」

ふと美夕はお腹に目線を下ろし、まじまじと見つめる。頬が勝手にふわりと緩んだ。

自分の名と父の名を受け継ぐ子。どんな子どもに育ってほしいだろうか。

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