若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
「あなたのように、強く、しなやかに生きてほしい――とも思うけれど」

慶を見上げて、美夕は笑った。そこに希望しかないとでも言うように。

「笑顔でいてほしい。幸せになってくれれば、それで充分」

慶も同じように、無垢な笑顔を見せる。誰しもに敬われる金融王ではなく、ひとりの男の顔で。

「なら、俺たちが笑顔でいなければな」

「ええ」

慶が美夕の頭をくしゃくしゃと撫でまわす。慶の胸に手をついて唇を差し出すと、ちゅっという甘い音を立てて求めに応じてくれた。

「お前が元気な子を産んでくれたら、ご褒美をやる」

「ご褒美? なあに?」

「秘密だ。驚かせたい」

慶はなにかを企んだ顔でにやりと微笑む。きっといじわるなことを考えているに違いないと美夕は思った。

「安心して。元気な赤ちゃんを産んでみせるんだから」

ご褒美などなくとも立派に産んでみせる。なにしろ美夕は、もうこんなにも出産が楽しみで仕方がないのだから。

この先の未来が待ち遠しい。ようやく美夕はお腹の子を心から愛おしいと思えた。


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