若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】

臨月直前、ぱんぱんに膨らんだお腹を抱え、美夕は慶とともに現在両親が住んでいる郊外の家に向かった。

約七年ぶりに会った父は、再会の感動以前に、まずお腹を見つめて「すごい大きさだな！　母さんのときより大きいんじゃないか？」と豪快に笑った。

七年前より細くなり、ぐっと老けた印象だが、元気そうで美夕は安心した。

高嶺社長が暴露記事を書き、父の冤罪疑惑が公になったのは半年前のこと。

再審に向けて準備を進めているが、冤罪と確定するまでには長い時間がかかる。

とはいえ、刑期を満了していること、暴露記事が大きな関心を集めていることから、世間での印象はかなりよくなったと慶は言う。

勅使河原議員は数々の罪を争点に裁判中。

当然議員職は辞職せざるを得ず、社会的にはすべてを失ったと言ってもいい。

「あのときは、美夕の意思も聞かずに無理やり嫁がせて悪かったね」

謝る父に、慶は「今さら俺の前でそんなことを言いますか」と表情を引きつらせた。

「結婚自体に不満はなかったけれど、なにも教えてくれなかったことは不満だったわ」

「娘に『父さん逮捕されるんだ』とは言えないだろう」

父は能天気に笑って言う。