若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
「慶もなにも教えてくれなかったのよ」

「おや。それはよくないよ、慶くん」

「自分を棚上げしないでくださいよ……」

リビングでそんなやり取りをしていると、母がキッチンから緑茶と茶菓子を運んできた。

「ごめんなさいね。私まで倒れてしまって。美夕のこと、全部慶さんに任せてしまって申し訳なかったと思ってるわ」

「あのときすでに美夕は嫁いでいました。俺が任されるのは当然です」

緑茶を口に運びながら慶は言う。美夕は母が用意してくれたノンカフェインの紅茶を飲みながら、当時のことを懐かしく思い返した。

「慶くん。美夕を守ってくれてありがとう」

不意に父があらたまった顔で慶に向き直る。

「俺の方こそ。大切な娘さんを任せてくださって、ありがとうございました。それに、今では俺の方が助けられています」

驚いて慶を見つめると、柔らかな眼差しが美夕に注がれていた。

ふたりのやり取りを見て、両親は安心したように微笑み合う。

「孫の顔を見られるのが楽しみだよ。美夕。頑張って元気な子を産むんだよ」

「もちろん」

次に両親のもとを訪れるときは、きっと赤ちゃんと一緒だ。

お腹の中で大暴れしている我が子を感じながら、早く出ておいでと祈りを込めた。



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