若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
お互いに似ている部分を押し付け合って、笑い合う。

成長に従って、夕夏の顔はどんどん変わっていくだろう。

泣き方も性格も。どちらに似ていくのか、美夕は楽しみでもあるが――。

「どちらでもいいわ。元気に育ってくれるなら」

寝息を立てる我が子を見つめて、美夕は晴れ晴れとした気持ちになる。

「ご褒美、やるって約束したな」

不意に慶が美夕の隣に腰かけ、覗き込んできた。

「そういえば……なにか悪いことを企んでいたみたいだけど」

「企むか」

ピン、と額を指先で優しくつつかれ、美夕は「きゃっ」と声をあげる。

全然痛くなかったけれど、とりあえず「家庭内暴力だわ」と主張しておくと、慶は「ぬかせ。愛情表現だ」と言って、額のその場所に重ねてキスをくれた。

「ずっと、これを渡す機会をうかがっていた。お前の負担になってはいけないと」

慶がポケットからなにかを取り出す。

夕夏を抱く左手の薬指を少しだけ持ち上げて、するりとそれを通した。

「これ……」

プラチナのリング。そこに大粒のダイヤがついていることに気づき、息を呑む。

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