若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
そんなことのためにここを選んだのだろうか。

どうしようもないことを高々と宣言にする慶に、思わず美夕は苦笑してしまう。

「普通の海じゃダメだったの?」

「他の男に見られるだろ」

とんだ独占欲だ。仕方なく美夕は持参した水着に着替えた。

シンプルなオフホワイトで、セパレートタイプ。ラッシュガードを着てプールに入ると、慶に半眼で睨まれた。

「そんなもん、脱げ」

「きゃあ」

問答無用でラッシュガードを剥ぎ取られる。慌てて腕をクロスして隠すと、慶は顎の下に手を添えてまじまじと美夕を見つめた。

「いい眺めだ」

「……毎日のようにベッドの中で見てるじゃない」

「それとはまた違うんだよ」

恥じらう美夕を置いて、慶は再びプールに飛び込み泳ぎ出す。

向こう側に辿り着くと、「来いよ。泳げないのか?」と美夕を挑発した。

「お、泳げるわよっ!」

スイミングに通った経験はないけれど、学校の授業では習った。二十五メートル程度は泳げるはずだ。

すいっと手を真っ直ぐに伸ばし漕ぎ出すと、体が水面にふわりと浮かんだ。

泳ぐ感覚は久しぶりだ。全身を包み込む水と浮遊感が心地よい。

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