若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
「俺は学生を孕ませる気などない。妻を子作りの道具だとも思っていない。いい加減にしてくれ。母の時代とは違うんだ」

鋭く言い置くと、エントランスに横付けされていた車の後部座席に美夕を押し込んだ。

(……私を守ってくれたの?)

運転席に乗り込む慶を眺めながら、美夕はぎゅっと膝の上の手を握りしめる。

あの日、慶は美夕を子ども扱いして抱いてくれなかったわけではなくて。

(妻として、尊重してくれたから……?)

茫然としている間に車は走り出し、あっという間に陰鬱な日々を過ごした忌々しい屋敷から遠ざかっていった。

美夕はおずおずと運転する慶に尋ねる。

「……どちらに行かれるんですか?」

「ここからそう遠くはない。すぐにわかる」

いまいち要領を得ない返答。

部屋のものがなくなっていたのも、きっと慶の指示だろう。なにをしようとしているのか、バッグミラー越しに表情を探る。

「聞きたいことがあるなら、聞いたらどうだ」

答えなかったのは自分の方なのに、偉そうに聞いてくる。だが、面倒な探り合いは不要ということだろう。それ自体はありがたい。

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