若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
「私の荷物はどこに行ったんでしょう」

「先に運び込んだ。お前、あの家は窮屈だっただろう」

尋ねられ、というより断定され、美夕は思わずこくりと頷く。

「もう少し自由に暮らせる場所を用意した」

慶の言葉に、胸がどくりと大きく震える。もしかして、実家を出てふたりで暮らそうと……?

未来に光が差した気がした。ようやく夫婦らしい生活ができるのでは、そんな期待に胸を弾ませる。

しかし、続きを尋ねる前に、慶はまたしても突拍子もない質問を重ねてきた。

「お前、将来なりたいものはあるか?」

「将来、ですか?」

突然、なぜそんな質問を? 美夕は眉をひそめつつ、模範的な回答を口にする。

「北菱家の嫁として立派に務めることができれば、満足です」

「……質問を変える。子どもの頃はなにを目指していた?」

なぜ今さらそんなことを尋ねるのかと不思議に思いながらも、美夕は答える。

「父の会社を手伝いたくて、経営学部に――」

「それも却下だ」

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