若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
は?と美夕は口を開ける。慶はいったいどんな言葉を引き出したいのだろう。

「後継ぎや家業など考えずに、やりたいことはないのか。将来の夢は?」

そんなことを聞かれても、名家に嫁いだ時点で未来の決まった美夕に、夢を語らせたところでなんの意味があるというのか。

「……中学の頃は、マスコミ関連の仕事に就きたいと思っていました。出版社か広告代理店などに就職できたらと」

「よりにもよって、マスコミか。お前はとことんアレだな」

慶が苛立った声を上げる。『よりにもよって』の意味が美夕にはさっぱりわからず、こちらまでイライラしてきた。

「私になにを言わせたいんですか」

飾らずに問いただすと、バックミラーに映った鋭い目が、鏡越しに突き刺さった。

「美夕。北菱家の嫁で終わるな。夢と目標を持て。自活できるように自分を鍛えろ。……なにがあっても折れるなよ」

自活……? 夢……?

慶はなにが言いたいのだろう。しかも、『嫁で終わるな』、『なにがあっても』とは不穏でしかない。

もしかして慶は、娶ったばかりにもかかわらず、もう離婚を考えている……?

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