若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
第一章 鍵のない箱庭
美夕が寝室を覗くと、大きなベッドに枕がふたつ並んでいた。
サイドテーブルには『美夕様』というメモの挟まったギフトボックス。
箱を開けて、絶句する。入っていたのは、精緻な刺繍が施されたレースの下着。
大事な部分を隠すつもりがあるのかないのか、わからないような構造をしている。
(これを身につけて夫を誘惑しろということかしら……?)
早く世継ぎを生んでくださいという無言の圧力。
これが現当主の指示なのか、使用人の行き過ぎた気遣いなのかはわからないけれど、いずれにせよ美夕には拒否権などない。
美夕は二日前にこの家、旧財閥北菱家に嫁ぎ、長男の嫁となった。
まだ十八歳の学生ではあるけれど、この身には跡継ぎを産むという重責が圧しかかっている。
ふうとひとつ息をつくと、素直にラベンダー色のスケスケ下着を装着し、毛布の中に潜り込んだ。
(そもそも、当の夫はまだ帰ってこないのだけれど)
夫の北菱慶は、美夕より十歳年上の二十八歳。家業の巨大グループ企業の跡取りとして、世界中を飛び回っている。
昨日も出張で帰ってこなかった。そもそも、籍を入れてからまともに会話をした記憶がない。