若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
美夕はあきらめてダイニングチェアに腰を落とした。四人掛けの、木目の綺麗なダイニングセットだ。

この家にあるものはいずれも新品。北菱家にあるアンティークの調度品とはまた違って、北欧系のおしゃれなインテリアが揃えられている。

美夕の好みにどんぴしゃだったことが、余計に悔しく思われる。

「桐江さん、ごめんなさい。少し疲れてしまったわ。お茶を淹れてくれる?」

美夕が声をかけると、桐江はなぜかきゅっと唇を引き結んだ。

いつもなら笑顔で「どんなお茶がよろしいですか?」と聞いてくれるはずだ。

なんなら「ティータイムにしましょう」と、とっておきのスイーツを出してきてくれるはずなのだが――。

「ごめんなさい、美夕さん」

「……桐江さん?」

彼女の様子がおかしいことに気づき、美夕は腰を浮かす。

桐江は気まずそうに目を逸らしていたが、やがて意を決したのか、美夕をキッと見つめ返した。

「私はもう、花柳家の使用人ではありません。美夕さんの自活をサポートするため――教師として、慶様に雇われました」

「教師……?」

美夕はぽかんと口を開ける。これまでも勉強を教わったことは多いけれど、自活のサポートとは、どういうことだろう。

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