若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
桐江は凛々しく眉を吊り上げ、試験勉強を見てくれていたときよりもよっぽど険しい顔で美夕に向き直る。

「これからは、ご自身のことはすべてご自身でやっていただきます。食事の準備も掃除も洗濯も、買い物も。私は指導に徹します」

「え……」

はっきり言って、美夕は箱入りのお嬢様だ。

家には常に使用人がいて、家事はすべて任せていた。美夕も母も自分で手を動かすことは稀――というか、美夕に至ってはほぼなかった。

書道や華道、ピアノ、バレエなど、たくさん習い事をして人より多く教養を持っていても、生きるためにもっとも必要な『家事』という技術が欠落していた。

「私が自分で……? 食事も、掃除も、洗濯もひとりで全部?」

「はい。もちろん、やり方は細かくご指導しますから、安心してください」

桐江の瞳の中に熱い炎が見えた気がして、くらりと眩暈を覚える。

こんな指示を出すなんて、慶はなにを考えているのだろうか。

「なぜ慶さんはこんなことを? 私が気に入らないのなら、早く離縁すればいいじゃない。わざわざこの家に閉じ込めて家事を勉強させるなんて……」

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