若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
なにより、父の帰りを待つ人間が必要だ。

そう考えた美夕は、ふらりとチェアから立ち上がった。

「……私、行かなくちゃ」

覚束ない足取りで玄関に向かう美夕に、桐江は「美夕さん!?」と縋りつく。

「家を守る人が必要だもの。あそこで父を待つわ」

「ダメです! 今あなたが姿を見せたら騒ぎになります。それに、そんな体では倒れてしまいますよ!」

玄関の前で行かせまいと桐江にしがみつかれ、美夕は体をよじった。振り払おうにも力が出ない。

「桐江さん、離して。こんなところでただ眺めているわけにはいかない」

「美夕さん! お気持ちはわかりますが――」

問答していると、ガチャリと鍵をいじる音がした。外から何者かが玄関の鍵を開けたのだ。

凍り付くふたりの目の前で、ドアがゆっくりと開かれる。

「なにをしているんだ、お前たちは」

姿を見せたのは慶。今日はスーツではなく、カジュアルなジャケットにブラックのパンツ、シンプルな白のインナーを合わせている。手には謎の紙袋。

美夕と桐江はもつれ合ったまま硬直して、ずかずかと家の中に入ってくる慶を視線で追いかけた。

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