若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
「理解したなら食事をしろ」

慶がクロックムッシュとポタージュの載ったトレイを美夕の前に押し出してくる。

美夕はひとつ大きく深呼吸すると、ポタージュの器を手に取った。

もうすっかり冷めてしまっているけれど、不思議と温かく感じる。

残りのポタージュを飲み干し、空になった器をトレイに置くと、ほんのり目もとを柔らかくした慶が手を伸ばしてきた。

ぽんぽん、と美夕の頭を撫でる。まるで、よくできましたとでもいうように。

慶はなんの言葉も発してはくれないけれど、温かみのある眼差しから伝わってくるのは、いたわりと慈しみ。

じわりと目に涙が滲みそうになって、慌てて下を向いて顔を隠す。

なんとなく慶に涙を見られるのは癪な気がして、クロックムッシュにかぶりついてごまかした。

「泣けばいい」

「泣きません」

「泣くのがガキの仕事だろ」

「もうガキではありません」

気遣って保護されるだけの子どもではいたくない。美夕は初めて自立したいと心の底から願った。

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