若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
思わず美夕は絶句した。まさか、慶からこんな提案をされるとは。

この家に来る前に尋ねられた『将来なりたいものはあるか?』という質問は、こうなることを見越していたというのか。

しかし、安直に慶に頼ってよいのかという疑念が湧き上がる。

今の美夕にはなんの価値もない、それどころか慶の汚点となるだろう。

慶からしてみれば、妻としてそばに置いておくメリットがないし、離婚をするならばこれ以上、世話をする義理もない。

「私は、慶さんに頼るわけには――」

提案を拒もうとすると、慶は腕を組みふんぞり返って、冷笑を浮かべた。

「そういうところがガキっぽいと言ってるんだ」

「なっ――」

「利用できるものは利用してやろうぐらいの気概を見せろ」

再び顎を押し上げられ、美夕は警戒から身を引く。しかし、そんな仕草すら予想通りとでもいうように、慶は愉しそうに笑う。

「お前はこれまでの人生、恵まれすぎていたんだ。だいたいのものは手に入っていただろ? なにがなんでも欲しい、手に入れてやるという貪欲さが足りないんだ」

美夕はぐっと押し黙る。ずっと両親に守られて生きてきた美夕は、なりふり構わず生きるということを知らない。

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