若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
ただ煽られただけだ。自分のやるべきことが見つかり、進むべき道が明確になった。

慶と離婚しても大丈夫なように自分を鍛える。それが今の目標だ。

「私、ふてぶてしい女になろうと思うの」

『利用できるものは利用してやろうぐらいの気概を見せろ』――慶に言われた通り、今この手にあるものを最大限に利用して自分を高めたいと思っている。

桐江は『ふてぶてしい』という決して褒められない形容に困惑するも、それがポジティブな決意なのだとわかったのか、どこか安心した顔をする。

「では私は、美夕さんがふてぶてしい女性になるためのお手伝いをいたします」

そう微笑んで、桐江は食べ終わったケーキ皿とティーカップを片付けようとする。しかし――。

「いいの、桐江さんは座っていて」

すかさず美夕は立ち上がり、食器をキッチンに運んでいく。

シンクでスポンジを泡立て始めた美夕を見て、桐江は心の底から安堵の吐息を漏らした。



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