若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
それから六年が経ち、美夕は二十四歳になった。
大学を辞めた翌年、四年制のメディア系専門学校に入学。
二十歳になると同時に、桐江の手を離れ本格的なひとり暮らしを始め、今では炊事洗濯掃除も慣れたものである。
二十三歳で無事学校を卒業した美夕は、三年前に創設されたばかりの出版社『文嶺出版』に就職を決めた。働き始めてもう一年が経つ。
美夕の父は三年以上にもわたる裁判の末、最高裁が上告を棄却し、三年の実刑判決が確定した。
保釈期間中も美夕は父に会うのを避けた。北菱家に嫁いだ身、変な噂が立っては慶が困るだろうと気を遣ったのだ。父もそうすべきだと賛同した。
つらく寂しくはあったけれど、出所後、元気な姿を見られると信じて耐え忍んだ。
父の収監後、母は実家を引き払い地方へ。美夕はたびたび母のもとを訪れ、一緒に暮らそうと持ちかけたが、「あなたはもう嫁いだのだから慶さんのもとにいなさい」と諭され、慶が用意したマンションにひとりで戻ってきた。
(いつまでもここにはいられない)
左手の薬指にはめている仮そめの指輪を見ては意思を固くする。
慶は自分を妻として認めていない。いつかこの指輪は慶に返さなければならない。