若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
「言っただろう。俺と離婚をするか、名実ともに夫婦となるか、選べと」

まだ慶は美夕を妻に迎える意思がある。

「私は……」

思わず美夕は押し黙る。選べと言われた瞬間、意図せず胸が熱くなったのはなぜだろう。

(私は慶に、妻として受け入れられたいの……?)

しばらく答えられずにいると、慶は短く息をついて、二枚の紙を美夕の手もとから奪い取った。

そのうち一枚を引っ越し業者に手渡す。

「時間を取らせてすまなかった。南麻布に運んでくれ」

南麻布――慶の自宅。

「待ってください、まだなにも答えて――」

「悩んだ時点で答えは出ている。嫌なら嫌と即答するはずだ」

涼やかな表情で言い切って、慶は部屋を出ていく。玄関まで足を運んだところで、茫然と立ち尽くしたままの美夕を振り返った。

「なにをしている。来い」

「っ、本っ当に、勝手な――」

「文句なら車の中で聞いてやる」

慶は玄関を出ると、美夕が着いてきていることを目の端でちらりと確認しながら、携帯端末を耳に当てた。どうやら運送関連の手配をしているようだ。

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