若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
「……気に入りました」

素直に口にする美夕を見つめ、慶の目がほんのり柔らかくなる。

言葉はなく、ただ眼差しをくれただけ。なのに、美夕の胸の中はふわりと暖かくなる。

住み替えが完了する頃には二十三時を回っていた。業者はこういった無茶な引っ越しに慣れているようで、短時間にもかかわらず収納まで完璧だ。

「今日はもう休め。引き続き文句があるなら、土日にゆっくり聞いてやる」

慶はそう言って、美夕にタオルやバスローブのある場所を教える。

「明日の朝は会社まで送っていく」

「大丈夫です。広尾の駅まで近いみたいですし、乗り換えの具合も確かめたいですし」

「忙しい朝に慣れないことをすると失敗するぞ」

「早めに出るので大丈夫ですよ」

そう断りを入れ、美夕はバスルームへ。広々としたスペースに円形のバスタブ。丁寧に手入れされていて、どこを見てもぴかぴかだ。

これが金融王のセカンドハウスか、と肩までお湯に浸かりながら息をつく。自分はその金融王の妻らしい。まったく実感はわかないけれど。

「慶こそ、私でいいのかしら……」

小さな疑問がバスルームに反響する。

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