若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
「飲み物しか……ない」

端っこの方に、かろうじておつまみの生ハムとチーズを発見する。調味料は――なさそうだ。

「男のひとり暮らしなんて、そんなものだろう」

「食事はどうされてるんですか」

「デリバリーか外食」

本当にそうかしら?と美夕は懐疑的だ。だが、慶以外の男を美夕は知らないので、なんとも反論できない。

冷蔵庫の中からミネラルウォーターのペットボトルを選び取り、グラスに開けた。

残りを冷蔵庫に戻そうとして、ふと手を止める。

「名前、書いておきます?」

「口つけてないなら、誰が飲んだっていいんじゃないのか」

「確かに」

「まあ、俺はつけるけどな」

え、と美夕は固まる。今の無駄な会話はなんだったのだろう。

「今後はルールを決めないと」

「いいだろ夫婦なんだから、間接キスくらい」

「直接口をつけると、雑菌が繁殖します。お腹を壊しますよ」

「じゃあ左側に置いとけ、俺は右に置く」

< 76 / 254 >

この作品をシェア

pagetop