若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
「……俺の予定は日ごとに変わる。だから合わせようとしなくていい。お前の予定は?」

「朝はだいたい八時にここを出て、夜は早ければ十九時には。毎月、校了前はいつも終電ですが」

「朝はお前と同じでいい。夜は早く帰れるようなら、あらかじめ伝えておくことにする。明日はおそらくだが、早く帰れるだろう」

なんだかんだ言って、結局は教えてくれた。一応歩み寄る意思はあるのだと解釈する。

「お前も仕事があるんだ。無理に家事をこなさなくていい。ハウスクリーニングも頼んである」

PCに目線を落としながら、慶は言う。

おそらく美夕の負担にならないように気を遣ってくれているのだろう。ぶっきらぼうな人だと、美夕は思った。

優しいのか、冷たいのか、よくわからない。深く考えてくれているようで、相当自分勝手だとも思う。

おそらく、慶の中ですべての事象に筋が通っているのだろうが、説明がないから横暴に見えてしまう。

(もしかして、優しいくせに、すごく不器用な人だったりするの?)

これも子どもの頃に一度惚れた欲目だろうか。美夕の中には夫のことを信じてみたい気持ちが生まれつつあった。


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