若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
コーヒーだけならここに来る必要もなかっただろう。自分の朝食に付き合ってくれたのだと知り、美夕はわずかに申し訳なくなる。

それにしても、頭を働かせたいという割には糖分のひとつも摂取しないのは矛盾していないだろうか。納得できずもやもやする。

「明日からは好きにするといい。ここで食べてもかまわないし、家に運ばせることも可能だ。ああ、クレジットカードを渡しておくから、生活費は――」

もやもやが耐えきれなくなった美夕は、淡々と説明を始めた慶の前にフルーツの載った小皿を置いた。

「……なんだ」

「フルーツぐらい、食べませんか」

「いらない」

「糖分を取っておかないと、ご自慢の頭が働きませんよ」

さらに慶の前にヨーグルトの小皿も追加する。

「腸内環境って大事なんです。脳腸相関って知ってます? 脳と腸は相互に影響し合っているんですよ。先日、雑誌でヨーグルト特集を組んだので調べたんですけど」

慶は面食らったような顔をしたが、やがてくっくっと喉の奥を震わせた。

「お前、意外と強引だな」

「どうせあなたは、嫌なら突っぱねるでしょうし、遠慮する必要もないかと思って。うるさい女はお嫌いでしたか?」

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