若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
「いや。文句のひとつも言わずに黙ってる女よりはずっといい」

にやりと口の端を跳ね上げ、大粒のイチゴを手掴みで口に放り込む。

「ほら、これで満足か」

「ヨーグルトは?」

「お前があーんしてくれたら、愛情に免じて食べてやる」

「人前であーんだなんて、恥ずかしいとは思いませんか?」

「思わない」

美夕はぎょっと眉を寄せる。

思わずきょろきょろと周りを確認した。席が離れていたりパーテーションで目隠しされていたりして、こちらに興味を示す者はいない。

客はみな静かに朝食を取っているし、スタッフは知ってか知らでか素知らぬ顔で給仕している。

とはいえ、金融王が妻にあーんされている現場なんてスクープされたら、大事件に発展するのではないか。

一応、マスコミに身を置く美夕としては、軽々しい行動は避けたい。

「私は恥ずかしいです」

小さめのスプーンをヨーグルトの脇に置くと、慶はつまらなそうな顔をして息をついた。

「からかいがいのない女だ」

「からかってたんですか」

「お前が葛藤する様は見ていて割と楽しかった」

「からかってたんですね」

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