若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
同伴が必須というわけではないのだから『夫は忙しくて連れてこられませんでした』と言い訳すれば問題ないはずだ。

うん、そうしよう、と美夕は自分を納得させる。

桃山が「私も会ってみたーい」と声を上げるが、美夕は「それはちょっと、無理だと思います」とやんわり断った。

とにかく、青谷に知られては面倒なことになる。「青谷くんには言わないでくださいね」と念を押し、面倒事を頭の片隅に押しやった。



十八時に会社を出た美夕は、自宅の最寄り駅で食材を買った。

今日の夕食はハンバーグにしようと思っている。明日の朝食に使うパンや卵、フルーツやヨーグルトも購入した。

あのドリンクしかない冷蔵庫を、もう少し生活感のあるものに変えていきたい。

米や調味料も揃っていなかったことを思い出し、ひと通り購入する。

大量の買い物袋を抱えて自宅に戻り、食材を冷蔵庫に詰め込むと、さっそく夕食作りに取りかかった。

料理はひとり暮らし時代、桐江に叩きこまれたので自信がある。

二十時過ぎ。帰宅してリビングに顔を出した慶は、ダイニングテーブルの上に並んだ夕食にわずかに面食らった。

「わざわざ作ったのか? 仕事だったんだろう?」

< 85 / 254 >

この作品をシェア

pagetop