若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
「今日はほぼ定時上がりで時間があったので。こういう日くらい自炊しないと」

さすがに残業後に手の込んだ自炊をしようとは思わないが、早く帰れた日くらいはがんばらなければ。

慶だからこそ、デリバリーだの外食だの言うが、世のサラリーマン女子はそこまで羽振りがよくない。自炊が普通。

慶の感覚に染まってはいけないと美夕は自分に言い聞かせる。

なにしろ美夕は、雑誌でヨーグルト特集やら、おいしくて手軽なおうちレシピやらを取り上げる立場の人間なのだから、読者と感覚がズレてはいけない。

「……荷物を置いてくる。すぐ戻る」

慶は自室に向かうと、ジャケットとネクタイを脱ぎ、シャツとスラックス姿になってリビングに戻ってきた。

美夕も夕食のセッティングや料理の後始末が終わり、ダイニングテーブルにつく。

「いただきます」

美夕が手を合わせたのを見て、慶も「いただきます」と箸を取る。

ナイフとフォークでなくてよかったかしら?と一瞬不安になった美夕だが、そこまで小洒落たものを作ったつもりもない、自分の料理には箸で充分だなと思い直し、開き直った。

慶はハンバーグに箸を入れて、ひと言。

「肉汁が出てきた」

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