若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
素直な言葉が口をついて出たのは、酔っていたからだろう。

寝転んだまま慶のシルエットをじっと見上げていると、ベッドに吸い寄せられるかのように体が倒れてきた。

「慶?」

顔の横に肘を置かれ、美夕の心臓が速くなる。

顔が近い。美夕の眼差しに応えるかのように、慶も無言で、じっとこちらを見つめている。

「キス、していいか?」

慶の表情はよく見えなかったが、その声は艶っぽく優しかった。

無理やりキスをされたことが二回ほどあったけれど、そのいずれとも違う雰囲気を感じ取る。

「なぜ?」

「……酔っているからだ」

酒を理由にされ、そうなのかと納得した。

酒は人を緩く、身勝手な生き物に変えてしまう。偶然、女性にキスをしたい気分になって、その近くに美夕がいたというだけだろう。

「俺もお前も、酔っている。どうせ、明日の朝には忘れてる」

さっさと答えろとばかりに、慶が決断を迫る。

見た目には素面に見える慶も、酔っているようだ。誰彼かまわずキスしたくなるくらいに。

明日には忘れているならいいかと、ぼんやり思う。

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