童話書店の夢みるソーネチカ
まだ新しいスチールロッカーには『相根』と書かれた名札が取り付けられている。
掘り込み型の取っ手を手早く引き、セーラー服の上着をハンガーにかけながら、千花は日常になりつつある『CLOVER』での活動を振り返っていた。
……読み聞かせの本を探しに行ったのがきっかけだったんだよね。
柳木とはある事件によって知り合い、読み聞かせの才能を買われてこの店にスカウトされた。
ここは童話書店だが、子どもやその親とのつながりを大事にする柳木は、月に二回、この店の向かいにある喫茶店で読み聞かせ会を行っている。母親層からの評判はいいと、マスターが教えてくれた。
しかし肝心の子どもたちには怖がられるみたいで……。
読み聞かせは場面の盛り上がりに応じて声の強弱や緩急を変える。柳木の声の迫力に反応してしまうのかもしれない。
そうして子どもに慕われる読み手を探していた柳木に、目をつけられたのが相根千花だった。
読み聞かせの目的もあるが、彼自身人相の悪さも相まって接客が苦手だったらしい。
千花も本が好きであり、幼い頃から小学校の先生になるのが夢だった。
子どもたちと関われる『CLOVER』でのバイトは魅力的で、勧誘されたその日に両親の了解をもらっていた。
……いけない急がなくちゃ。
午後五時頃からは人の入りが多くなってくる。壁にかかる時計は四時五十分を少し過ぎていた。
ロッカーの扉が奥まで閉じたのを確認して、千花は店内に戻った。
掘り込み型の取っ手を手早く引き、セーラー服の上着をハンガーにかけながら、千花は日常になりつつある『CLOVER』での活動を振り返っていた。
……読み聞かせの本を探しに行ったのがきっかけだったんだよね。
柳木とはある事件によって知り合い、読み聞かせの才能を買われてこの店にスカウトされた。
ここは童話書店だが、子どもやその親とのつながりを大事にする柳木は、月に二回、この店の向かいにある喫茶店で読み聞かせ会を行っている。母親層からの評判はいいと、マスターが教えてくれた。
しかし肝心の子どもたちには怖がられるみたいで……。
読み聞かせは場面の盛り上がりに応じて声の強弱や緩急を変える。柳木の声の迫力に反応してしまうのかもしれない。
そうして子どもに慕われる読み手を探していた柳木に、目をつけられたのが相根千花だった。
読み聞かせの目的もあるが、彼自身人相の悪さも相まって接客が苦手だったらしい。
千花も本が好きであり、幼い頃から小学校の先生になるのが夢だった。
子どもたちと関われる『CLOVER』でのバイトは魅力的で、勧誘されたその日に両親の了解をもらっていた。
……いけない急がなくちゃ。
午後五時頃からは人の入りが多くなってくる。壁にかかる時計は四時五十分を少し過ぎていた。
ロッカーの扉が奥まで閉じたのを確認して、千花は店内に戻った。