雷鳴に閉じ込められて
「こんな朝早くに誰かしら……」

「お母様、あたしが見てきます」

萌黄が家の戸を開けると、そこには近所に住む女性が立っていた。何やら慌てた様子で、顔は真っ青になっている。

「お菊(きく)さんじゃないですか。こんな朝早くに、どうされたんですか?」

萌黄が訊ねるも、お菊は震える唇で意味のない言葉を紡いでいるだけだ。何を伝えたいのかがさっぱりわからない。萌黄が困り果てたその時、彼女の兄が顔を真っ青にしながら走ってくる。

「萌黄、大変だ!!お前の縁談相手が……!!」

「えっ……?」

それは、萌黄がもうすぐ結婚する予定だった男性が遺体で見つかったという話だった。萌黄が言われた水路まで走ると、そこには人だかりができている。

「すみません!通してください!」

人をかき分け、ようやく萌黄の視界に遺体が映る。水路に横たわっている男性は、確かに萌黄が結婚するはずだった人だ。誰かに斬り付けられたようで、大きな傷からはまだ血が出ている。そして、まるで誰かに焼かれたかのように手足は黒焦げていた。
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