雷鳴に閉じ込められて
「ッ!」

想像以上に凄惨な事件現場に、萌黄はその場で崩れ落ちる。駆け付けた父や母、そして兄が声を掛けてからも、何も答えることができない。

萌黄の目から、一筋の涙が零れ落ちた。



それから、この残忍な事件について町奉行所が捜査を行ったものの、目撃者などはおらず、犯人の手がかりすら何一つ見つからないまま時間だけが過ぎていった。

その頃、萌黄はまた父と母に連れられ、新しい縁談相手を紹介された。またしても父と長い付き合いのある男性の息子で、筋肉質で頼り甲斐のある男性だった。

(前の縁談相手が亡くなったばかりなのに、もう代わりが用意されてるんだ……)

それほどまでに結婚してほしいのかと、萌黄は冷めた気持ちになってしまう。だが、そう思っている間にも着々と婚姻に向けた準備は進められていた。しかしーーー。

「萌黄!」

萌黄が嫁入りをする直前、兄が大慌てで部屋に入ってくる。そして、息を切らせながら言った。
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