雷鳴に閉じ込められて
萌黄より一つ歳上の彼は、剣術だけでなく算術も得意な人だ。物知りで、萌黄の知らないことをたくさん教えてくれた。知らない人と結婚するよりは、昔から知っている人とした方が幸せかもしれない。疲れ切っていた萌黄は、そんな風に考えるようになっていた。

(次こそ、ちゃんと結婚を……)

だが、縁談が決まった数日後、彼もまた何者かによって殺害されてしまった。萌黄が彼が殺害された河原へ行った時、お菊が血塗れになった彼を抱き締め、泣き叫んでいた。

「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!どうして、どうして……!あぁぁぁぁぁぁ!!」

萌黄の胸が苦しくなり、力を失った体はその場に崩れ落ちる。周りの人々は、ヒソヒソと顔を見合わせながら話していた。その声は萌黄の耳にも届く。

「あそこのお嬢さん、もう二人も縁談相手が亡くなっているらしいわよ」

「もしかして、お嬢さん何者かに呪いをかけられていたりして……」

心ない言葉も飛び交い、萌黄は黙ったまま俯く。何故このような気持ちを味合わなければならないのか、理解することができない。
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