雷鳴に閉じ込められて
本気で思っていることを萌黄が告げると、それまで笑っていたタケミカの顔からスッと笑顔が消える。頬が赤く染まり、青玉のようなその瞳に一瞬暗い陰が落ちた。だが、数秒後にはいつものタケミカに戻ってしまう。

「嫁入り前の女子《おなご》がそのようなことを軽々しく言うものじゃないでござる」

頭を軽く撫でられ、萌黄は反論したかったものの、そう言われるのも仕方がないという気持ちもあった。

彼は神で、自分はただの人間。時間の流れ方が恐ろしく違い、タケミカから見れば十六歳の娘など赤子と変わらないだろう。

(きっと、タケミカ様に対するこの気持ちは「憧れ」というものなんだ……)

そう思うと、気持ちが落ち着いてくる。鳥居の前で萌黄はタケミカに頭を下げた。

「タケミカ様、変なことを言ってしまい申し訳ありませんでした」

「謝る必要はないでござる。それよりも、気を付けて帰るように」

また頭を撫でられ、タケミカはニコリと笑う。萌黄は安心と嬉しさを感じながら、「はい」と返事をして頷く。
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