さくらの結婚
 いつまでさくらは一緒に暮らしてくれるんだろうか。年頃だし、付き合っている彼氏ぐらいいてもおかしくない。最近、家にいないのは仕事が忙しいだけじゃなく、恋人に会ってるからかもしれない。もしかしたら、明日にでも家を出て彼と暮らすなんて言い出すんじゃ……。

「まだ怒ってるの?」

 さくらが黙ったままの僕を覗き込む。

「怒ってないよ」
「でも、楽しそうにも見えない。こんなに可愛い子とデートしてるのに」
「もちろん楽しいよ。ただ、こんな風にさくらと一緒にいられるのは後どのくらいなんだろうって思ってさ」

「え?」

 さくらが意外そうに目を見開いた。

「僕の事は心配しないでいいぞ。好きな人がいるんだったら遠慮なく一緒になりなさい。さくらの人生なんだから」

「何それ」

 さくらの声が低くなる。僕から視線を外し、さくらは不機嫌そうに正面を向いた。 

「一郎、なんかお父さんみたい」
「お父さんだろ。血のつながりはなくても僕たちは親子だ」

 さくらが落胆するようにため息をつく。それからちょっとトイレと言って席を立った。いなくなったさくらの席を見ながら、何かさくらを落ち込ませるような事を言ったのかと、心配になってきた。
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