さくらの結婚
「そういう話は帰ってから聞くからさ」

「帰ってからじゃ気まずくて出来ないよ。私の初恋の人は一郎なんだからさ」

「え」

「ずっと一郎の事が好きなの」
 
 僕が好きという言葉と初恋の人だという言葉が頭の中で混ざった瞬間、ドキリとした。
 冗談って、言葉が続く事を期待したが、さくらは黙ったままだ。

「からかってるんだろう?」

 おっかなびっくりで、さくらに声を掛けるがさくらは首を左右に強く振った。

「さっき好きな人がいるなら一緒になっていいって言ったよね?」  

 さくらが振り向き、挑むように見てくる。  
 僕は誤魔化すように曖昧な笑みを浮かべた。

「一郎、私と結婚して」  

 ハッキリとしたさくらの言葉が響いた。
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