さくらの結婚
結婚――。
あまりにも唐突で声が出ない。
これはドッキリか何かで、実はテレビカメラが出てくるなんて事はないだろうか。そんな事を一瞬思うが、浜辺には僕たち以外に人はいない。
僕は深く息を吐き、さくらを見た。
さくらが急にしゃがみ込んだ。
「どうした?」
「き、気持ち悪い……。飲み過ぎた」
さくらはこみ上げて来るものに耐えるように眉頭を寄せていた。
「一郎、助けて……」
「ほら、トイレ行こう。立てるか」
さくらを抱えるように立ち上がらせた。
さくらは酩酊状態だった。覚束ない足取りのさくらを支えて歩くのは大変だった。
何度も砂浜に足を取られて転びそうになった。ここまで酔っ払ったさくらは初めてだった。