きっと、恋をしている
体育館の入り口は、まだ他の生徒で賑わっていた。
私は怖くて、無言で靴に履き替えた。
すると先輩は私に手招きをして、体育館の裏の影に呼んだ。

「…な、なんでしょうか…」

私は震えて小さくなった声でそう言った。

「昨日、駅で見たよね?」

私はやっぱりか、と思ったが、ややこしいことに巻き込まれるのは面倒だと思い、嘘をついた。

「な、なんのことですか…」

「俺の友達が煙草吸ってたの、見てたよね?」

私はどう答えるべきか迷って、無言になってしまった。

「アイツら、次学校にバレたら退学なんだよ。俺も目につく場所では吸うなって注意してんだけど」

「は、はぁ…」

私のことはお構いなしと言うように、先輩は喋り続ける。

「だからさ、ごめんだけど、学校にチクんないでやってほしいんだよね」

そう言って先輩は私の顔を覗き込んだ。

「ち、チクるつもりとか、ないですから…、安心してください…」

私は早くこの場を逃げ出したくて仕方なかった。
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