妹と人生を入れ替えました~皇太子さまは溺愛する相手をお間違えのようです~
11.暇と妃と侍女の野望
(暇だ。ビックリするぐらい暇)
長椅子に姿勢を崩して腰掛けながら、わたしは大きなため息を吐く。
当初の予想通り、妃としての生活は単調を極めていた。
着飾って、お茶飲んで。また着飾って、またお茶飲んでの繰り返し。暇すぎて頭が禿げそう。
頼みの綱である華凛は、しばらくの間後宮には戻れないらしい。誰に読まれても大丈夫なように、当たり障りのない手紙を送ったら、『ごめん』と一言だけ返事が来た。余程忙しいのだろう。
(憂炎の奴、せめて他に妃を送り込んでくれたらなぁ。そしたら少しは張り合いがあるのに)
現状、憂炎の後宮にはわたししか妃が居ない。
現皇帝――憂炎の父親だ――の後宮とは、行き来が出来ないわけじゃないものの、でっかい門で区切られている。このため、広大な敷地の中、殆ど一人で暮らしているようなものだった。
正直言って、毎夜あの体力バカの相手をするのはしんどい。事務仕事で堪った鬱憤を、閨で晴らしているんじゃないかと邪推してしまうレベルだ。
それにわたしは、自分と対等に接してくれる話し相手が欲しい。ただでさえ閉鎖的な空間の中、側に居るのは主従関係にある侍女や宦官だけ。張り合いが無いし、つまらない。
その点、妃同士ならば身分的にはあくまで対等だ。
仲良くするも良いし、向こうが後宮特有のドロドロ愛憎劇を望むなら、そういう演技をするのもやぶさかではない。暇よりマシだ。
そう思って、先日、憂炎に妃を増やすよう提案してみたんだけど、物凄い形相で却下された。
(良いじゃんねぇ。自分の娘を後宮に送り込みたいって人間が、列を連ねて待ってるんだからさーー)
武の高官であるわたしの父親――――その娘である『凛風』を東宮妃にしたことで、ヤキモキしている人間は多い。
自分の権力を拡大させたい中央政権の人間だけじゃなく、諸国の王族、地方の有力者まで、そのラインナップは充実している。
だけど、得をするのは何も妃側の人間だけじゃない。
妃が増えることは、後ろ盾の少ない憂炎の地位を盤石にすることに繋がる。ただでさえ隠匿された皇太子なのだ。皇太后に対抗するためにも、味方は多い方が良い。
つまり、婚姻とは一方通行ではないウィンウィンの関係と言えるだろう。
(だけどなぁ、もう一回提案したら今度はガチギレするだろうなぁ、あいつ)
妃を増やすよう提案したときの憂炎は、まるで般若みたいな顔をしていた。紅い瞳が地獄の炎みたいにメラメラ燃えてて、さすがのわたしも後退ってしまったほどだ。
全く、何がそんなに気に喰わないのか相変わらず理解できない。
長椅子に姿勢を崩して腰掛けながら、わたしは大きなため息を吐く。
当初の予想通り、妃としての生活は単調を極めていた。
着飾って、お茶飲んで。また着飾って、またお茶飲んでの繰り返し。暇すぎて頭が禿げそう。
頼みの綱である華凛は、しばらくの間後宮には戻れないらしい。誰に読まれても大丈夫なように、当たり障りのない手紙を送ったら、『ごめん』と一言だけ返事が来た。余程忙しいのだろう。
(憂炎の奴、せめて他に妃を送り込んでくれたらなぁ。そしたら少しは張り合いがあるのに)
現状、憂炎の後宮にはわたししか妃が居ない。
現皇帝――憂炎の父親だ――の後宮とは、行き来が出来ないわけじゃないものの、でっかい門で区切られている。このため、広大な敷地の中、殆ど一人で暮らしているようなものだった。
正直言って、毎夜あの体力バカの相手をするのはしんどい。事務仕事で堪った鬱憤を、閨で晴らしているんじゃないかと邪推してしまうレベルだ。
それにわたしは、自分と対等に接してくれる話し相手が欲しい。ただでさえ閉鎖的な空間の中、側に居るのは主従関係にある侍女や宦官だけ。張り合いが無いし、つまらない。
その点、妃同士ならば身分的にはあくまで対等だ。
仲良くするも良いし、向こうが後宮特有のドロドロ愛憎劇を望むなら、そういう演技をするのもやぶさかではない。暇よりマシだ。
そう思って、先日、憂炎に妃を増やすよう提案してみたんだけど、物凄い形相で却下された。
(良いじゃんねぇ。自分の娘を後宮に送り込みたいって人間が、列を連ねて待ってるんだからさーー)
武の高官であるわたしの父親――――その娘である『凛風』を東宮妃にしたことで、ヤキモキしている人間は多い。
自分の権力を拡大させたい中央政権の人間だけじゃなく、諸国の王族、地方の有力者まで、そのラインナップは充実している。
だけど、得をするのは何も妃側の人間だけじゃない。
妃が増えることは、後ろ盾の少ない憂炎の地位を盤石にすることに繋がる。ただでさえ隠匿された皇太子なのだ。皇太后に対抗するためにも、味方は多い方が良い。
つまり、婚姻とは一方通行ではないウィンウィンの関係と言えるだろう。
(だけどなぁ、もう一回提案したら今度はガチギレするだろうなぁ、あいつ)
妃を増やすよう提案したときの憂炎は、まるで般若みたいな顔をしていた。紅い瞳が地獄の炎みたいにメラメラ燃えてて、さすがのわたしも後退ってしまったほどだ。
全く、何がそんなに気に喰わないのか相変わらず理解できない。