妹と人生を入れ替えました~皇太子さまは溺愛する相手をお間違えのようです~
「凛風」
遠く離れた反対側の席で、憂炎が立ち上がっているのが見える。動揺しているらしい。心配そうな表情で、こちらの方を窺っている。
(馬鹿)
睨みつけ、口だけ動かして座らせる。
動揺を見せるな。付け入る隙を与えるな。
皇后が一番恨んでいるのは他でもない、憂炎だ。皇太子に相応しくないだとか、あれこれ理由を付け、排除されてしまいかねない。
それは、妃であるわたしの失態もまた同じ――――。
「ありがたく頂戴いたします」
そう言って、差し出された茶菓子を口に運ぶ。周囲が静かに息を呑む音がした。
背後に感じる強い圧。躊躇わず、咀嚼し、飲み下す。
「とても、おいしゅうございます」
満面の笑みを浮かべ、柄にもない口調でそう言う。すると、方々から安堵のため息が聞こえてきた。
(こんな状況下だもの。贈り主がこんなにハッキリしているのに毒を仕込むなんて真似、出来っこないもんね?)
だけど、そうと分かっていても、ビビってしまうのが人の性。
そして、そこに付け入るのが、この皇后のやり方なのだろう。
きっと今頃は、微笑みを貼り付けたその下で、めちゃくちゃ悔しがっているに違いない。
心の中であっかんべーをしながら、わたしは小さく息を吐いた。
遠く離れた反対側の席で、憂炎が立ち上がっているのが見える。動揺しているらしい。心配そうな表情で、こちらの方を窺っている。
(馬鹿)
睨みつけ、口だけ動かして座らせる。
動揺を見せるな。付け入る隙を与えるな。
皇后が一番恨んでいるのは他でもない、憂炎だ。皇太子に相応しくないだとか、あれこれ理由を付け、排除されてしまいかねない。
それは、妃であるわたしの失態もまた同じ――――。
「ありがたく頂戴いたします」
そう言って、差し出された茶菓子を口に運ぶ。周囲が静かに息を呑む音がした。
背後に感じる強い圧。躊躇わず、咀嚼し、飲み下す。
「とても、おいしゅうございます」
満面の笑みを浮かべ、柄にもない口調でそう言う。すると、方々から安堵のため息が聞こえてきた。
(こんな状況下だもの。贈り主がこんなにハッキリしているのに毒を仕込むなんて真似、出来っこないもんね?)
だけど、そうと分かっていても、ビビってしまうのが人の性。
そして、そこに付け入るのが、この皇后のやり方なのだろう。
きっと今頃は、微笑みを貼り付けたその下で、めちゃくちゃ悔しがっているに違いない。
心の中であっかんべーをしながら、わたしは小さく息を吐いた。